2010年09月30日

鍼の効果はプラセボ?

毎日新聞付録の月刊誌「毎日夫人」10月号に、鍼の効果はプラセボだという内容の記事が載りました。

信じる効果をプラセボ効果といいます。一般に西洋薬などにも信じる効果があることは知られていて、本当の効果かどうかを確かめるためには、偽薬を使った比較対照試験が行われます。まず患者群を無作為に二群に分けて、一群には本当の薬、別の一群には偽薬を処方します。薬は見かけ上は全く同じに作ってあり、どちらが本物か偽者か患者も医者もわからないようにしておきます。コーディネーターのみが知っています。
こうして、本物の薬の方が、偽薬よりも効いたとすれば、信じる効果でなく本当の薬による効果があったものと判断されます。

しかし、鍼の場合はどうでしょう。偽鍼が難しいと思いませんか?
ほんとに打ったかどうかは、患者さんにわかってしまうでしょう。
この記事には、ツボに打った群と、ツボでない場所に打った群とに
分けた比較対照試験が紹介されています。結果、両者に差がなかったというのです。これをもって、「不眠、肩の痛み、うつなどいろいろな症状ではりは効果があるように言われていますが、西洋医学的な判定基準では、信じる効果以上のものはなかった。」としています。

鍼の治療では、偽鍼群を作ることが困難です。ツボをずらして打ったということですが、ツボは、動くのです。ツボの位置は目安としたものがありますが、私たち鍼灸師は、その目安の付近の反応している点を探して鍼を打っています。
また、技術が上がれば、打った場所から、広く鍼の刺激を伝えることができるようになります。
先の比較対照試験での偽鍼群が、実は偽鍼ではなかった可能性があるのです。
また、別の、偽鍼の例では、浅く刺したり、刺さないで皮膚表面に置くだけの鍼も使われていますが、そもそも、ほとんど刺さないで治療する方法もあるので、比較にはなり得ません。

1997年に、アメリカの国立衛生研究所が「成人の術後や薬物療法時の吐き気、嘔吐、および歯科の術後痛に鍼が有効であるという有望な結果が得られている。」という声明を出しています。

明確な「偽鍼」の方法を開発しない限り、真の効果を、証明することは難しいと思われます。

重要なことは、鍼を使った比較対照試験では、どちらの群も効果があったと言うことです。
日々治療をしていて、腰を曲げられなかった人が、1本の鍼を刺した後に、腰を曲げられたり、肩が挙がらなかった人が、挙げられるようになったりという事例を経験していると、これが、単なる「信じる効果」だとは信じられません。
harikiji1.JPG

posted by 院長 at 15:49| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記
この記事へのコメント
はじめまして。
鍼灸の効果について色々と記事を読んでいるうちにこちらへたどりつきました。
私は専門家でないのでわかりませんが、体のどこにさしても何らかの影響がありえる以上、得られた結果が期待された鍼治療の結果なのかそうでないのか見分けるのは難しそうですね。

しかし、プラセボの効果もとても大きいということがわかってきたようです。
www.emedexpert.com/blog/general/the-power-of-placebo/
上の記事によりますと「偽薬は真の痛み止めになる」「治療的儀式による影響」「偽手術は本当の手術並の効果が見られる」等、偽薬・偽施術の効果は従来考えられていたよりも、もっと大きいようです。とても面白い記事なのでもしご興味がおありでしたら読んでみてください。

プラセボの効果がここまで大きいのであれば、治療に実際に効果があるかということももちろん大事ですが、治療を信じることが何よりも大事なことだと思います。
Posted by 類猿人 at 2011年04月04日 05:46
類人猿さん、コメントありがとうございます。

確かに、プラセボ効果自体、大変高いものだと思います。プラセボといいながら、実は、「自然治癒力の発動」をしているのではないかと思われます。

私たちの行っている中医学は、この自然治癒力を高めることに主眼を置いた治療体系です。
そして、キーワードは「気」。エネルギーである気を増やすこと、そして、そのエネルギーを流すことがとても重要です。

そしてその生成や動きに最も大きく作用するのが「意念」。気持ちとか、意識とかイメージが近い言葉かもしれません。

治ろうとする意念が、大きくなると、身体の気の生成、動きに影響を及ぼして身体の治癒力が高まります。

また、治療者は、患者さん側の意念を通さず、直接、気の流れを調節もします。軽く皮膚に触っただけでも、変化する場合もあるし、場合によっては、触ることなく気の流れが変化することもあります。

二重目隠し試験として行われている、ツボ以外の鍼刺激や、刺したふりの偽鍼さえも、実際に効果を及ぼしている可能性があるように思います。

いずれにしても、患者さんの苦痛を如何に取るかが重要で、そのために何千年も、実践研究がなされてきたものが鍼治療だと思います。いかにプラセーボ効果を出させるかという技術も含んでのことかもしれません。











Posted by 院長 at 2011年04月07日 12:47
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