呑み過ぎと言えば、古くからの本草書に、「解酒毒」と言う効能が出てきます。呑み過ぎや二日酔いに効果があるということです。明代の本草書である『本草綱目』を見てみますと、解酒毒或いは醒酒などの効能のある食物には、「今月の薬膳」の本年1月号でご紹介した大根や、世間でよく知られているシジミのほかにも、銀杏、あずき、蚕豆、ホウレンソウ、レンコン、梨、西瓜、ザボン、ジャックフルーツなどがあります。葛も酒毒に良いとされていて、その花である葛花とあずきの花を粉にして酒に溶かして飲むと酔わないと記載されています。
西瓜など夏の果物は、昔は冬には手に入りにくかったでしょうが、現代では、少々高くついても手には入ります。本来からだを冷やす夏の食材を冬に食べるのは、常態では理にかなったことではありませんが、湿熱の塊ともいえる酒や、辛いもの、油っこいものを食べすぎた“非常事態”には、湿熱を取る効能のある西瓜は効果を発揮します。季節感が無くなってはしまったが便利な現代こそ、薬膳の知識を上手に使いたいものです。
珍しい使い方をもうひとつ。豆腐の項に、「焼酎酔死」には熱くした豆腐を薄く切って全身に貼り、豆腐が冷えたら熱いものと取り換える、とあります。急性アルコール中毒の救急救命法だと思われます。いずれにせよ「呑み過ぎない」のが一番の薬であることは間違いありません。
さて、年末年始に暴飲暴食をするとその後体重が増えるだけでなく、体が重だるく感じたり、疲労感を感じやすくなったりします。メタボの保健指導対象者さんのお話を伺っていると、平均で2s、最大2週間で8s増えたという方がいらっしゃいました。
そんな時でも、疲れやすさや元気がないと感じると「栄養のあるものを食べなければ」や「体をしっかり休めなければ」と考える方は多いと思います。はたしてこれは正しい養生の方法なのでしょうか。
食べすぎは胃腸に大きな負担となり、その後は飲食物の消化や吸収の機能が低下しやすくなります。でも、胃腸が弱っているのですから、余分に食べることはかえって負担をかけていることになります。ましてやスタミナをつけようとしてよく食べられている焼肉のような脂っこいものを食べるのは逆効果。食べすぎた後は、食事の量を減らして消化の良いものを少量食べることで、胃腸を休ませてやることが必要なのです。おすすめしたいのは消化のよいおかゆや、スープ類です。消化が良いので、物足りなさや空腹感を感じるとは思いますが、疲れた胃腸にはこの空腹感こそ最高の薬なのです。
今回の薬膳は補脾、健脾の作用のあるれんこん、ヤマイモを使い、油やバターを使わず、体にやさしいクリームスープです。鶏の胸肉には、疲労回復に役立つといわれるイミダゾールジペプチドが含まれ、疲労タンパク質を下げる効果も期待できます。この時期、体をいたわるやさしい食事を心がけてください。
「根菜のクリームスープ」(4人前)
材料:鶏胸肉 1枚 にんじん 中1/3本、長いも 300g、レンコン 150g、ねぎ 少々
牛乳 200ml、酒 100ml、塩・コショウ 適量、薄口しょうゆ 大さじ1。
作り方
@鶏胸肉は薄くそぎ切りにする。
Aにんじんは薄く拍子木に切る。
B長いもとレンコンはすりおろしておく。
C鍋に水を500ml入れ、沸騰したら鶏胸肉とにんじんを加え、酒も加えて煮込む。
D肉とニンジンに火が通ったら、あくをきれいにすくい取り、牛乳を加える。
Eさらに煮立ったらBのレンコンと長いもを流しいれ、よく混ぜ合わせる。
Fスープにとろみがついたら、薄口しょうゆ、塩、こしょうで味をととのえる。
G最後に小口切りにしたネギを加え、さっと煮込んで火を止める。

